■江崎浩司/ヤコブ・ファン・エイク/≪笛の楽園≫  
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    第6集 レビュウ     
 
 

 
 
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   [録音評] レコード芸術2021年2月号より
 ●全曲演奏のCD化に挑戦しているシリーズの第6集は
 作品番号第89番から第108番までの独奏曲を演奏
 している。牧歌的な空間を想わせる響きの中で、曲の
 解釈と表現を縦横無尽に楽しみながら演奏している様
 が、演奏音からにじみ出ている。普段馴染みの少ない
 珍しい楽器を含む曲集は 完結の第8集に向けて気分が
 盛り上がってきた。 (常盤清)

  ブックレットより(抜粋)

 楽器の音程は耳の良し悪しで決まる。何を今さら、とお叱りを受けるだろうか。しかし自分が押さえる
指の位置で音程が決まるヴァイオリンなどではなく、あらかじめキチンと調律されたピアノの演奏ですら
「音程が良いなあ!」と嬉しくなったり、まるで逆に聴こえて悲しくなったりもする。この場合は正確に
いうと音のピッチの物理的な高低ではなく、音楽的文脈の中における音程感の問題なのだけれど。

江崎さんが手にするリコーダーのようにシンプルな楽器になるほど、音程感は吹き手の技量次第だ。発音
機構が固定されていて、トーンホールを指でじかに押さえる。細かなパッセージをこなすフィンガリング
の厄介なこと、はるか後の時代に生まれたキーシステムを搭載する木管楽器に比べるまでもない。つまり
は奏者の息と指にまつわる身体的要素がパフォーマンスに直結する度合いが高い。それを制約ないし限界
と感じさせず、むしろ表現の自由度にすら結びつけながら紡ぎ出す、鮮やかなヴァリエーション!変奏が
進むほどにどんどん細かくなる音階走句の「ドレミファ……」的な美観が、そして一連のモードの流れを
音楽的につかさどる自然な起伏が心をそそる。

彼が用いた楽器の音律的な面まで考察の対象をするのはあまりに専門的事象になるので避けておきますが、
その演奏行為をしかと支える何かの介在を痛感させずにはおかない。 教会の鐘を整音する上で発揮した
超人的技量で知られるファン・エイクも、たぶん楽園で笛を手にしながら同じようにその何かを、そう、
耳で操っていたに違いないのだ。

                                       (木幡一誠)



 ~レコード芸術 2021年2月号【 新譜月評 】より~

  特選盤  推薦     美山良夫 
 
  ユトレヒト(オランダ)には、いくつもの鐘楼が残り、今もカリヨンが聞こえてくる。その奏者でも
 あったヤコブ・ヴァン・エイクの《笛の楽園》に含まれた約150曲すべてを録音してしまおうという
 画期的なプロジェクトも、いよいよゴールが見え始める場所まで来た。《笛の楽園》は、2つの曲集から
 なるが、今回リリースされたディスク(第6集)からは、《笛の楽園》第2集(1646年)に含まれた作品
 となる。

 指ならしのためであるかのような〈プレリュード〉に始まり、当時のオランダでよく知られていた歌の変奏、
 イギリスに由来する旋律、カルヴァン派の詩篇曲などが、ルネサンス・リコーダー、ヴォイス・フルート、
 ガナッシ・タイプ、バロック・リコーダーなどのほかショームも使用して紹介され、つぎつぎに変化する
 音色を楽しみながら、確信に満ちた演奏を堪能できる。

 この第6集も、演奏者自身による個々の作品の原曲、由来、背景などについての詳細な紹介が素晴らしい。
 情報のみならず、エイクに注がれる演奏者のまなざし、熱意。それは〈菩提樹の木の下で〉の項を読むだけ
 でも伝わってくるだろう。1本の笛のための音楽の中に、広がる世界の大きさを感得せざるをえない。
 オリジナルの譜面は、いささか素っ気ないリコーダー独奏のための曲の羅列だが、江崎浩司の手にかかると、
 そこに含まれた音楽の豊穣や歴史的バックグラウンドの広大さが眼前に展開する。見事な成果である。


  特選盤  推薦     矢澤孝樹 
 
 江崎浩司のエイク《笛の楽園》全曲録音プロジェクトも、八合目まで到達したというところだろうか。
 今回から第2集となる。コロナ禍で継続が心配されたが、これはすでに2019年5月の録音。もう150曲の
 録音は完了しているのかもしれない。それにしてもこれは評者にとって「楽しい試練」だ。単旋律による
 変奏曲がここまで果てしなく積みあがってくると、ひたすら江崎浩司の至芸を楽しむ以外に余計な言葉が
 必要なのだろうか、という思いにすらかられる。だが、いつもながら本当に充実した江崎の解説を読みな
 がら虚心に耳を傾けていると、1曲1曲の向こう側に開けている広大な世界が次々と姿を現し、それぞれの
 曲がそれぞれのドラマを伴って私たちに語りかけてくる。

 たとえばトラック9⃣(第97曲)の〈王妃〉。江崎の解説に拠れば「王妃」といえばこの時代はチャールズ
 Ⅰ世の長女で、オランダのオラニエ公ウィレム2世の妻となったメアリー・ヘンリエッタ・スチュアート
 を指す。しかしその名を持つ曲がなぜフランス風クーラントの様式で書かれているのか……?
 ほのかな哀感漂う曲調が変奏される向こう側に、想像の領域が拡がる。

 そしていつもながら曲に応じた楽器が選択され、一つひとつの楽器の響きと楽曲のマッチングも楽しみだ。
 同じ「羊飼い」を題材にしても、一方ではショーム、他方ではヴォイス・フルート、とか。そして簡素な
 詩篇がみるみる万華鏡と化す。〈いかに幸いなことでしょう〉など、技巧の冴えは今回も満載。
 


 ~読売新聞 1月21日夕刊 【 サウンズBOX ■クラシック より~

  推薦盤   選評:松本篤也 安田和信 
 
 「笛の楽園」は17世紀オランダのエイクがリコーダーのために創作した一大曲集。
 その150余りの全曲を一人で演奏・録音しようという江崎浩司の挑戦が好調だ。
 各種どんな楽器を用いても、指のキレは極上、響きもスカッと晴れ渡っている。
 江崎自身の筆による各曲の解説も嬉しい。
 


 
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H.H.

 
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