■江崎浩司/ヤコブ・ファン・エイク/≪笛の楽園≫  
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  [録音評] レコード芸術2018年4月号より
●全17トラック、10種類にも及ぶ楽器の
 音色を聴かせるが、2016年9月と2017
 年3月に分けて、ほぼ同一条件で収録されたと
 想像する。録音会場の十分な響きを得てかなり
 長めの残響が選択されているようだ。
  ほぼ中央にしっかりと位置し、音色が楽器に
 よりそれぞれ異なるため、その響き感は奥行き
 に寄与したり、広がりに寄与したりと、音色の
 違いが味わえる。
             (石田善之)


  ブックレットより(抜粋)

噺家が語る落語の音声に合わせて俳優たちが口パクで演じる、いわゆる”アテブリ”の芝居を流す
番組が評判を呼んでいる。確かに面白いですね。それはそれでOK。今まで舞台の下手を向いて
しゃべっていた噺家が、ふと上手方向に視線を変えて相槌を返すとき、顔つきといい物腰といい、
まったく別な人物が登場を果たすような、落語の醍醐味にもあたる瞬間は寄席なり独演会なりで
堪能すればよい。

江崎浩司さんが無伴奏で奏でる笛にも、落語の高座に通じる楽しさがあると常々感じている。
多重人格的な音形の吹き分けに興じながら、演奏全体が彼以外の何物でもない形で像を結ぶ点に…
と付言も可能か。

このアルバムでいえば、ファン・エイクが題材として求めた大衆歌そのものに対話的な書式(さら
には歌詞)が含まれていたりする。そしてその変奏の随所を彩るのが、音域を逐次移動させながら
交わされる合いの手風の応答楽句や、旋律声部にバスを補うような跳躍音形。そんな箇所になれば
なるほど水を得た魚のごとく、豊かな空間性を持ったパフォーマンスとして彼は再現してくれる。
単旋律声部として書かれた音楽が、三次元的な(時間軸的な記憶を喚起するという意味では、とき
に四次元的なまでの!)重層性をもって耳に飛び込むわけです。

落語を口パク芝居化した番組には、舞台設定となることの多い時代的な要素を、現代の視聴者の目に
伝わりやすくする意図も介在していたと聞く。江崎さんのファン・エイクに関しては¥、その心配は
あるまい。作曲者の生きた時代や、作品成立の背景をなした事象への深い考察に基づいた演奏から、
「笛の楽園」に遊ぶ人々の姿が生き生きと浮かび上がる。
そう、まるで噺家の名人芸に接するかのように。

                                       (木幡一誠)
 
 
 
 
~レコード芸術 2018年4月号 【新譜月譜  音楽史】より~

  特選盤  推薦     皆川達夫 
 
 17世紀オランダのカリヨン奏者ヤコブ・ファン・エイク(1589/90~1657)による無伴奏リコーダー
独奏曲集《笛の楽園》である。 江崎浩司さんはほぼ150曲ちかい作品の全曲演奏盤を企画され、今回が
昨年8月刊行の第1巻につづく第2巻となる。

先盤のように江崎さんは、リコーダーをソプラノからバスまで8種、ショーム2種を取り換え吹き換えして
わが国でもひろく愛唱されているジョン・ダウランドの〈カム・アゲイン〉やらジューリオ・カッチーニの
〈アマリリうるわし〉などの世俗声楽曲の器楽用編曲、〈私の魂よ、主をたたえよ〉のような宗教詩篇曲、
純器楽曲〈クーラント〉など、それぞれのジャンルから17曲を吹き分けておられる。

この演奏を実現するためには、たった一本のメロディを記した楽譜から、もてる限りの技を駆使してエイク
が求めた音を現出し、さらに原曲になった声楽曲の歌詞や来歴、当時の音楽をとり囲むもろもろの状況など
についてのふかい知識と造詣とが必要とされる。この過酷で孤独な作業を江崎さんは毅然とした姿勢で押し
すすめ、見事に成就しておられるのである。

 技の確かさ、音色の変化の妙、各曲のくりかえしを彩る変奏の巧み、
すべての面で笛の楽しさを十全に引きだした畏敬にあたいする好演奏である。
解説文もすばらしく、今からもう全曲盤の恙ない完成を祈り願いたい。
 


  特選盤  推薦     美山良夫 
 
 リコーダーとその音楽へ、作曲のプロからのアプローチの極みのひとつがテレマン《メトーディッシェ
・ゾナーテン》であるとすれば、演奏のプラクティスから産み落とされた極みはエイクの《笛の楽園》で
あろう。テレマンで音楽史部門のレコード・アカデミー賞に輝いた江崎浩司が、彼の才覚と技量をもって
取り組んでいる《笛の楽園》148曲の全曲録音プロジェクトは、第1集から多くのリスナーを感嘆させず
にはおかない演奏であった。

 今回の第2集には、リコーダー愛好家にとってはなじみ深い〈イギリスのナイティンゲール〉や〈アマ
リリうるわし〉が含まれている。だが曲目とともに、8種のリコーダーと2種のショームが、曲の性格や
内容、背景に呼応するように使い分けられているのも、このディスクの魅力だ。たとえば風刺唄の旋律を
受け継いだ第11曲はバス・リコーダーといった具合に。

 さらに、これは幾度も繰り返してきたことだが、どの楽器を吹いても、まさに自家薬籠中といった演奏
ぶりにも驚かされる。さながら、音による「笛の万華鏡」の趣をもっている。だがここに刻まれた演奏の
極みは、江崎浩司による個々の作品深耕と、それをふまえた確信にあふれた演奏にこそある。テクニック
先行の《笛の楽園》演奏とは一線を画し、ここではエイクが、ひとつひとつの作品で何をもとめたのか、
演奏を通して明快に示される。
作品と楽器と演奏とが、三位一体を形成しているといっても過言ではなかろう。

 
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H.H.

 
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