■江崎浩司/ヤコブ・ファン・エイク/≪笛の楽園≫  
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[録音評] レコード芸術2020年5月号より

●番号順に収録しているシリーズ5作目は第70番から
 第88番 までを収めているが、これで全体のほほ
 半分。 今回は20曲中5曲が二重奏で他は独奏曲。
 10種類以上の リコーダーや古典管楽器が、素朴で
 幻想的な雰囲気に包まれて曲ごとに使い分けた演奏で
 続いていく。 邦人演奏家による西洋音楽史上貴重な
 演奏資料となる全作品CDが完成すれば文化的意義は 
 大きい。

                  (常盤 清)

  ブックレットより(抜粋)

もう10シーズンは昔に、女子フィギュアスケートのTV放送を見ていたときのこと。解説者がいわく。
「音楽の世界観をよく表現しています」。 音楽に限らず、ある作品の状況設定や雰囲気などの総体に
世界観という言葉を与えるのは、俗な用法として定着を見ている。

しかしその世界観を、ファン・エイクの曲集が言葉本来の意味において備えている点については、もはや
筆者が御託を並べるまでもない。 江崎さん自身が寄せた解説文で、入念かつ緻密な検証を踏まえながら
(第1作目からアルバムのリリースごとに一歩一歩、まるで探偵ドラマが眼前で進行するようなスリルと
共に)解き明かしていく「楽園」の意味が、その何たるかを雄弁に物語っている。

今回の第5巻は「笛の楽園」第1集の完結編。プログラムの前半にはテクニカルな楽句の目立つ曲が多く、
技巧面のみをとれば第1集のレコーディング全体でもハイライトをなすくだりと形容可能だ。この流れが
落ち着いた先に、第1集に5曲のみ収録された2重奏曲が登場する。音楽的にも他のナンバーとは傾向を異
にしており、それがなぜこの場所に?という謎に対する江崎さんなりの答が、彼の読み解く「楽園」像の
補強ともなる。見事な考察。

曲ごとに持ち替えられる楽器の種類と意表をつくまでの多彩さはいつもながら(二重奏ではその愉悦感も
倍増!)。 大小のリコーダーからショームからドルツィアンまで、発音原理は異なれども”笛”としての
あり方を共有する者たちが、ここでは最良の吹き手を得ながら、自分たちに与えられた理想郷の空気を
満喫している。

                                       (木幡一誠)


 
 
 
 ~読売新聞 4月16日夕刊 【 サウンズBOX クラシック】より~

   推薦盤          西村朗 松平あかね 安田和信 
 
   リコーダーの江崎浩司によるエイクの大規模独奏曲集「笛の楽園」全曲録音の第5巻。
   宮廷歌曲や賛美歌から酒飲みの歌までバラエティーに富む内容で、歌心と技巧の見せ所も満載。
   曲に応じて14本もの楽器を持ち替える江崎の技量にも圧倒される。二重奏も楽しい。

 
~レコード芸術 2020年5月号 【新譜月譜  音楽史】

  特選盤  推薦     美山良夫 
 
 何の変哲もない教会を囲む小さな、週末の花市場以外は駐車場として使われている広場こそ、ヤコブ・
ヴァン・エイクがリコーダーの妙技を披露した「笛の楽園」なのか。盲目の彼はそのように感じていたに
違いない。彼が遺した《笛の楽園》すべてを、リコーダーの枠をいくらか逸脱してまで多種の笛を駆使して
録音しようというプロジェクトは第5集となった。今回が折り返し点あたりであろうか。

 《笛の楽園》の原譜は、小さく素っ気ない。曲のタイトルも、仲間に通じればいいだけの符牒のようで、
判然としない。江崎浩司のアプローチは、往時この旋律にどのような背景や含意があったのかを探求し、
解明した事実を自身の推量をふくめ曲ごとの解題に示し、並行して音楽の特徴を活かす楽器も選び出す。 
各種リコーダーにショーム、ドゥルツィアンを取り混ぜて演奏を展開、楽器選択が曲の性格を巧みに
隈取りする。

 第4集までについての指摘をくり返すことになるが、江崎浩司はさらに豊かなイマジネーションと変奏の
テクニックを相乗させる。それは冒頭、ガナッシのアルト・リコーダーで奏される長大な〈甘い眠り〉の
技巧的変奏から明々白々。

 第5集で注目しなくてはならないのは、5曲の2声作品。〈アマリリうるわし〉などが東京藝大在学中の
富永和音との共演で収められている。いずれも短い作品ながら美しいデュオだ。今、《笛の楽園》を満喫
できるのは江崎自身だと思わざるを得ない会心作。

  特選盤  推薦     矢澤孝樹 
 
 江崎浩司の「楽園」めぐりの笛の旅も、第5集にたどり着いた。全8集予定のシリーズの後半、《笛の
楽園》第1集の完結巻である。巻の最終盤ということもあってか、技巧的な聴かせどころの多い曲が目立つ。

それにしても第5集ともなると新鮮味を……と思われる方は、まず冒頭の〈甘い眠り〉をお聴きいただけば
そんな先入観は吹っ飛んでしまうだろう。 R・ジョーンズ由来の哀感溢れる旋律を一音一音慈しむように
江崎のガナッシ・ソプラノ・リコーダーが奏で、単旋律のむこうに広大な空間が開ける。変奏に移り、控え
めに音価は分割され、やがて目にも綾な線香花火となって空間をいっぱいに満たしてゆく。圧巻の10分半。

その後もバス・リコーダー、ドゥルツィアン、ハカ・ソプラノと楽器を次々と持ち替えながら、それぞれの
楽器にふさわしい声を与えてゆく江崎の至芸を満喫できるのだが、今回は終わり近くの5曲が2声の作品で、
富永和音との二重奏が楽しめる。江崎の単旋律から引き出すニュアンスの多彩さはいつも聴き惚れるしかない
のだが、「ふたり」の音楽の」親密さに、私は深く心を動かされてしまった。結ばれるべき人と人が距離を
とらねばならないという、恐ろしい今の世界のせいだろうか。そんな私の感傷はともかく、ふたたび一人に
戻った江崎は締めくくりの詩篇150篇を鮮やかに吹き上げる。

今回もブックレットの本人解題は読みごたえ十分、「楽園」や二重奏曲についての推理など唸らされるばかり。

 

 
 
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H.H.

 
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