「堀江はるよのエッセイ」

〜日常の哲学・思ったこと考えた事〜

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正直な話



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正直な話

















































 “贈り物にしたいので…”と、友人からCDの註文をもらった。

 最初のCDを出したときからのお客様だ。

 “在庫は沢山あるので、早速お送りします”と返事をしたと話したら、
 “そんなことを言うもんじゃない”と、親しい人に注意された。
 “良く売れたので、もう少ししか残ってません”とか言わないと有り難味がないという。

 それどころか…。私は御礼のメールに、
 “ご註文頂いて嬉しくて元気が出ました。”なんて書いてしまった。
 買う身になれば、そうかもしれないが、有り難味もウソではしかたない。

   *     *     *

 出版社から電話があった。
 新しく出る曲集に、私の「ソナチネ」が収録されるという。
 何年も前に、あるコンペティションの課題曲に採用されたピアノのための作品だ。

 これまでにも、雑誌などに楽譜が載ったことはある。
 かたつむり出版(*)という形で、作品集やCDを出したりもしたけれど、
 名前の通った出版社が出す曲集に、自作が載るのは初めてだ。
  (*2000年までの私「恩赦・かたつむり」参照)

 丁寧なメモを添えた校正譜が送られて来た。
 嬉しくて涙が出た…なんて言わない方が良いのだろうか。
 出版では「エッ?」と思うような応対をされたこともある。
 そういう思いをするのが嫌で、機会を失うのを承知で、殻の中に閉じこもった。
 こんなところで復活とは、人生諦めるものではない。

   *     *     *

 友人にシャンソンを歌う人がいて、コンサートをするという。
 彼女の歌ならば、聴きたい人は沢山いるだろう。
 コンサートは何ヶ月も先だけれど、チケットが無くなるのが心配で電話をした。
 
 “どういたしまして。大丈夫…売るほどありますから!”

 カラカラ笑って、友人が言う。
 有り難味のことは、気にしないらしい。
 安心して私が言う。

 “あのね、私の曲、こんどホンモノの出版社から…”

    いや、もう止めておこう。

                       2005年3月



     

























 “サクラってさぁ、花だけじゃない…”

  今や白髪の紳士になった、かつての同級生が言う。

 若葉も、冬枯れの姿も良いではないかという風流はさておき、
 桜並木の美しい学校に9年間いて、花が散れば間もなく毛虫の季節、
 歩けばスウーッと目の前に降りてくるブランコ毛虫には、私も泣きたい思いをした。

 “あとは毛虫、綺麗なのは花だけなんだけど、
  でも花が綺麗だって、それだけで、みんなにあんなに愛されてる。
  人間も一つ良いところがあれば、それでいいと思うんだよね”

 中学時代を共に過ごした友だちは、
 まあ言ってみれば、お互い羽化する前を知っているわけで、
 ついそんな昔の寸法で考えてしまうのだけれど、
 こういう言葉を聞くと、その人の上に流れた年月の豊かさが思われて、
 同い年の人間としては、なんだか歳をとることが楽しくなってくる。

 人中でいろいろ苦労もしているはずの彼から、
 何年か前に聞いて“いい言葉だなぁ”と思って、
 春になると、あっちこっちで言ってまわっている。


 
判断


 外国の死刑囚の臓器による移殖手術を仲介するビジネスが、
 日本に進出を計画しているという記事を読んだ(産経新聞・3月27日)。

 添えられた解説は、死刑囚ドナーをどう考えるかについて、
 様々な角度から述べた後、次の言葉で結ばれている。

 “それだけに「死刑囚ドナー」の是非は、
  最後は患者自身が判断するしかないのかもしれない”

 そうだろうか?
 患者に、どれだけの選択肢があるだろう?
 患者には、自らの生と死、二つに一つの選択しか無い。
 追い込まれた人に「是非の判断」を委ねるのは、余りに残酷ではないか。

 患者と共に、というより、むしろそれ以上に判断を求められるのは、
 自らの判断に従って行動することの出来る、現在健康な人ではないだろうか?
 命について、自分はどのように考えて生きるのか、
 人間の命とは、どういうものなのか。

 判断は行動につながる。
 より多くの行動が出来る人にこそ、
 判断の責任、判断の結果についての責任があると、私は思う。


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