公園 |
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久しぶりに、家の近くの善福寺川緑地公園を歩いた。
川沿いに並ぶ樹々の、竹ぼうきを束ねたような梢が、淡い緑を帯びている。
この辺りは昔は田んぼだった。昭和39年に出来たと公園のサイトにあるけれど、
樹々が育って、今のような公園になったのは、ずっと後ではないかしら。
私は結婚して関西に住むようになったので、ほとんど歩くことがなかった。
4歳違いの私の弟は、会社員になってから、ここで毎朝ジョギングをしていた。
16年前、弟はウインドサーフィンの事故で亡くなった。彼が住んでいた実家が
空になって、私が関西からUターンして住むことになった。
公園を、私も散歩するようになったけれど、弟の愛したものを盗るような気がして、
心から楽しめなかった。そんなふうに考えるのは間違っていると分かっていても、
長い間、気持を切り替えることが出来なかった。
ふと今日、”もういいよね”と思った。
16年前にはまだ生まれていなかった子供たちが、若いお父さんお母さんと、
自転車に乗って、ボールを転がして、よちよち歩きで、遊んでいる。
私は、もうすぐ74歳になる。生きている私は、今を大切に生きるしかない。
弟は弟なりに自分の人生を精一杯に生きた。私も自分の人生を、精一杯生きよう。
彼の分までとは言わない。人生は一人に一つのものだから。
2018.1.15
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小豆粥 |
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相撲、もう見ない…と思ったりもしたけれど、やっぱり見ている。
体の具合で、じっと坐っているのが続くと背中が辛くなるので、最近は終盤だけ。
5時を過ぎる頃から台所で夕食の支度をしながら、場内のざわめきや行事の声で
見当をつけて、立ち合いに間に合うようにテレビのある隣りの部屋へ飛んで行く。
行ったり来たり、忙しい。
砂かぶりや、お弁当を食べながらの枡席での観戦を、一度くらいはしてみたいと
思っていたけれど、砂かぶりは力士が落ちてきたりするし、枡席は狭くて4人席で
1.5m四方くらいだそう。それなら我が家で手足をのばして見る方が良い。
雑誌のグラビアに載っているようなレストランや老舗旅館にも、行けたらなぁと
ため息をついたりしていたけれど、最近ふっと、そういうものへの憧れが消えた。
お金を払って手に入れた幸せは、払ったお金の分しか続かない。
それよりも、自分に合ったサイズの幸せを、こまめに自分の手で作るほうが、
無理がなくて楽しい。
* * *
先日の大雪の日に、思いついて小豆粥を炊いた。
雪を見ながら食べて、楽しかった。
作曲中のリコーダーのための曲集は、カレンダーになぞらえて全12曲。
三月、四月と進んで、今書いている曲は五月がテーマ。
気持は春へ飛んでいます。
2018.1.23
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アラとヘタ |
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昨日の夕食は、お鍋。
スーパーの魚コーナーに北海道のタラが、パックされて非常に手ごろなお値段で
売っているのを見つけた。300gほどあって「アラ」と書かれているけれど、
どう見ても、アラではない。関西風に言えば「ヘタ」、肉で言えば「切り落とし」
だろう。サイズの小さな切り身という感じで、骨も見当たらない。
ちり鍋にしたが、ほくほくプリプリして、とてもおいしかった。
* * *
関西に居たとき、仕事場のあった宝塚の高級スーパーで、「ヘタ」を見つけて
買ったことがある。やや小ぶりの鯛の、刺身用のサクを取った残りらしい。
細長いのが二つ。半透明の白身に艶々したピンクの縞が、いかにも新鮮だ。
小食な人の一人前ほどの量なのが、一人で食べる仕事場のお昼には丁度良く、
ささやかな贅沢を楽しむことにした。
食べて30分くらいした頃、チクチクチクッと胃が痛みだした。えっ?!
食中毒だ…と気づいたのは、叔父から体験談を聞いていたから。大急ぎでお湯を
沸かして、教わったマニュアルに従って、食塩を入れた「ぬるま湯」を作って、
大量に飲んでは無理やり吐くことを、どう考えても何も残っていないと思われる
まで繰り返した。これが良かったらしい…痛みは消えて、私は無事だった。
高級スーパーで、刺身を取った残りの「ヘタ」は、猫のエサだったのだろう。
野生に還るのを防ぐとかで、猫には生で食べさせない。必ず火を通して与える。
店はそのつもりで雑に扱ったのかもしれない。まさか人が「ヘタ」を食べるとは
思わなかったのかなぁ。それを生で食べちゃたのだから、危ないところだった。
* * *
我が庶民的スーパーのタラのアラは、もちろん火を通したこともあって無事に
おいしくお腹に納まった。残りのおつゆは、翌日の今日のお昼の楽しみ。
煮詰まった分を水でのばして、煮立ったところで塩と薄口醤油で味を調えて、
温めた御飯と、たっぷりのネギを入れて、片栗粉を混ぜた溶き卵を少しずつ
流し入れ、ふんわりと煮えたところへ、焼いておいた餅を載せた。
肉系のお鍋の後は、残ったおつゆは、ザッと漉して、ブイヨンの代わりにして
カレーを作るとおいしい。半分は遊び…という気持があるから、話に聞いては
いても出来なかった冒険…バナナやチョコレートを入れるとか…を思い切って
してみたり。お鍋の後のリサイクルは、冬の楽しみの一つ。
台所が寒い辛さを、ちょっと忘れる。
2018.2.4
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