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「ひらがなの手紙・2」リコーダーの曲を集めて リコーダー独奏・小林達夫 ギター・松本吉夫 パーカッション・蘆田吉光 リコーダー・小林理子 イラスト 新田和繁 ESC-R-1003 小曲集「はるのむこうへ」ギター伴奏版 収録 ¥2800 ↓ CD「ひらがなの手紙・2」発売記念価格・¥2500 ★ 取扱店 かたつむり出版 |
メイン頁「カタツムリの独り言」も お楽しみ下さい。 堀江はるよの最新の出版CD |
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≪美しく目覚めた花々≫ 三善 晃 私が生まれたときに建てられた生家を、五〇年目の年の秋、取り壊した。 翌春、整地された跡地一面に一種類の草が萌え出し、やがて紫色の花が一斉に咲いた。 跡地は紫一色の花畑になった。きっと花は、五〇年前のこの地(武蔵野)に咲いていて、 家が建てられたとき種子となり、五〇年間、縁の下の暗がりで休んでいたのだろう。 花にとって、五〇年は一刻のまどろみの時間だったにちがいない。陽光を浴び、雨水と 新鮮な空気に触れて、種子は一夜の眠りから目覚めたように本来の営みに戻ったのだ。 東京芸大作曲科を卒業してからしばらく作曲の筆を断っていた堀江はるよさんが、 また作曲を始め、いま次々に愛らしい作品を生み出しているのは、武蔵野の紫の草花の 眠りと目覚めのようだ。堀江さんにとって、曲を書かなかったのは一刻の休みであり、 再び書き始めるということは、種子が芽吹き開花することと同じように、 自然な営みの再開であるにちがいない。 堀江はるよさんの美しい開花を心から祝福し、見事に咲いた花々を愛でたい。 (作曲家 日本芸術院会員 2000・7・5) |
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★ 作品ノート |
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「風の笛」 |
冬枯れの野に忘れられた一管の笛が、風に鳴る。(1992) Tenor Solo |
「春によせて」 |
ほんとうは舞台でお目にかけたい作品。(1993) Recorder Duo T 笛を吹く青年 (Alto) U ? (Alto・Tenor) V 二羽の小鳥 (Soprano・Alto・Tenor) |
「空の下」 |
笛と太鼓のコンチェルト。5楽章から成るが、TとUは続けて演奏される。(1993) Recorder & Percussion T・U(Soprano・Nakers・Tambourine) V(Bass・Nakers) W(Alto・Scotch Drum) X(Sopranino・Soprano・Nakers・Tambourine) Nakers(ナッカーラ )は金属、粘土、木などで作られた半球形の胴に 皮を 張った楽器で、 現在のティムパニの前身。初めアラビア、トルコ、 エジプトなどで普及し、13世紀にヨーロッパへ、そしてインドでも 用いられるようになった。 2個一組で用いられる。 今回は金属で作られたものを使用。 |
小曲集 「はるのむこうへ」 |
はるを越えて、何かをさがしに行こう!(1997〜98) Recorder & Guitar はるのむこうへ(Alto) すみれ(Alto) ウンガレスカ(Tenor) 夜に(Alto) たんぽぽとねずみ(Soprano) 小さなアブ(Sopranino) ねむたくなるワルツ(Alto) |
「ハーメルン」 かたつむり出版へ戻る |
ハーメルンの笛吹き」の伝説による。(1996) Recorder Solo T 彼方より(Alto) U 石畳の道で(Alto) V うそ(Alto) W ちいさなけだものたち(Sopranino) X こどもたち(Soprano) Y 笛(Soprano) Z 彼方へ(Soprano) < あらまし > 舞台は十三世紀、ドイツのハーメルン。 ネズミが増えて困り果てた町の人々は、集まって相談し、 ネズミを退治した者には褒美を与えるとのお布令を出す。 一人の男が来て笛を吹く。町中のネズミが出て来て男の後につづく。 男は町を出て川を渡り、ネズミは続いて川に入って溺れ死んでしまう。 戻って来た男は褒美をもらおうとするが、町の人々は約束を守らない。 男は怒って、もう一度笛を吹く。町中の子供たちが出て来て男の後につづく。 町はずれに大きな岩がある。岩は二つに割れ、男は子供たち共にその中に姿を消す。 遅れた子供が一人だけ残される。 * * * 絵本、物語、英語の授業の副読本と、 幼い頃から様々な形で、私はハーメルンの物語を読んだ。 いつ読んでも、この物語は私に、おとぎ話と違う何かを感じさせた。 シンデレラや王子には無い現実的な感じが、“笛吹き男”や“町の人々”にはある。 人、世間、そんな言葉を知る前に、この物語は私にそういうものについて考えることを 教えてくれた。 親になった。 初めから立派な親など居はしない。 “どうしたら良いのだろう”と悩みながら子供を見つめて、 一つまた一つと答を探すしかないのだと、今は思う。 けれどその頃は、そんなふうに思えなかった。私は立派な親になろうと焦って、 我が子の幼い試行錯誤を、温かく支えてやる事ができなかった。 楽しい子供時代を、私は娘から奪ってしまった。 その後悔が、いっそう私にハーメルンの物語のことを考えさせた。 伝説の時代、中世の絵画に描かれた子供は、 大人をそのまま小さくしたような顔で、暗い目をしている。 親を置いて出て行った子供たちは、その町でどんな暮らしをしていたのだろう。 ハーメルンの町で、 女性の多くは夫を失うと共に無収入になり、生きるのも難しかったという。 今の日本でそんなことは無いけれど、それでも、私は女性の一人として 差別される悲しみを味わうこともあった。 そんな時、私は裏切られた笛吹きの悲しみを思った。 なぜ町の人々は笛吹きをだましたのだろう。 相手が旅芸人ではなく、彼らと同じ“市民”であったなら、 約束は守られたのではなかろうか。 彼らは、笛吹きを同じ人間と思わなかった。 市民権を持たない下層民の中でも最も蔑げすまれる賎民だった笛吹きに、 自分たちと同じ感情があるとは思わなかった。 ハーメルンの伝説は、もう過ぎたことなのだろうか? この曲を書くことによって、私はそう問いかけたかった。 |
******************** ★ プロフィル (CD出版時です。最新のものはこちらをご覧ください) 堀江はるよ(作曲) 東京都出身。 成蹊小学校、成蹊中学校、都立駒場高校芸術科を経て、東京芸術大学作曲科卒。 故池内友次郎、島岡譲、三善晃の諸氏に師事。 ギター、リコーダー、ピアノの作品を多く作曲。CD収録作品の他に、 ピアノソロ・「ソナチネ」(第9回ピティナ・ピアノ・コンペティションF級課題曲採用)、 ピアノデュオ「古典舞曲へのあこがれ」(第1回・国際ピアノデュオ作品コンクール入選) 「クラス会」(第2回国際ピアノ・デュオ・コンクール入選)、 ギターソロ・組曲「 はこべの庭」、ギター合奏曲「つる」などがある。 <かたつむり出版>より「堀江はるよギター曲集T〜W」、 小曲集「はるのむこうへ」を出版。 ギターの作品18曲を収録したCD「ひらがなの手紙・1」および、 リコーダーの作品11曲を収録したCD「ひらがなの手紙・2」を、リリース。 作曲活動のかたわら、ネットにエッセイのサイト「カタツムリの独り言」を掲載中。 小林達夫(リコーダー・ソロ) 大阪府出身。西岡信雄に師事。 1978年、アンサンブル活動に於いて大阪文化祭賞および音楽クリティック・クラブ奨励賞を受賞。 1988年、ロンドンに於いて、 “ルフトハンザ・フェスティバル・オブ・バロック・ミュージック”に参加。 西日本を中心にリコーダー、オカリナ、各種民族楽器による活発な演奏活動を展開。 1990年より2000年現在までの、委嘱作品を含む堀江はるよの全リコーダー作品を初演。 東京リコーダー協会理事。 蘆田吉光(パーカッション) 京都府出身。大阪音楽大学打楽器専攻。 クラシックを中心に様々なジャンルの打楽器を研究し、ソロからアンサンブルまで幅広く演奏。 中でも「台所コンチェルト」は、演奏回数が100回を越える。 大阪音楽大学非常勤講師、阪神国公立大学吹奏楽連盟指導員、日本吹奏楽指導者協会会員、 日本打楽器協会会員。 松本吉夫(ギター) 1954年大阪府出身。17歳でギターの青木邦雄門下となる。73年から77年までアメリカに留学。 カリフォルニア州フルトン市立大学音楽学部在学中の76年同校より「Men of Distinction」を受賞。 その後サンフランシスコ音楽院に全額奨学生として入学、 ギターをG.サケラリウ、M.ロリマー両氏に師事。 77年帰国。ソロ、デュオの演奏活動の傍ら様々な楽器と共演。『カヴァ・サン・トリオ』のメンバー。 ソロのCDに「ひらがなの手紙・1・ギターの曲を集めて」「松本吉夫・ギターリサイタル」がある。 関西室内楽協会会員。日本ギターコンクール協会会員。 小林理子(リコーダー) 大阪府出身。西岡信雄に師事。リコーダーアンサンブル“tuku2”代表。 1993年、“第3回こばやしたつおリコーダー・リサイタル”に於いて、 堀江はるよ作曲「春によせて」の初演で小林達夫と共演、好評を博す。 |