この曲集を、私はリコーダーとチェンバロのために書きました。
私は1998年に、これと同じ小曲集「はるのむこうへ」を、別な形で出版しています。
旋律楽のための小曲集…独奏楽器はリコーダー、フルート、その他、音域の狭いものから
広いものまで何でも。伴奏はギターとピアノのための2種類の楽譜を収録しました。
リコーダーの江崎浩司さんから、チェンバロの伴奏で「はるのむこうへ」を演奏したいと
言って頂いて、新たにチェンバロ用の楽譜を作ることにしました。
もちろんギターのために書いた伴奏はチェンバロの役に立ちません。
それなら同じ鍵盤楽器であるピアノのために書いた伴奏なら大丈夫かというと、
これもチェンバロには合わないのです。
ピアノに比べて音域が狭い、ペダルで残響を引き伸ばすことが出来ない…などの相違点は、
わずかな書き換えでカバーすることも出来ますが、一番の問題は、音そのものと、
音が作る響きの違いです。これは少々の書き換えなどではカバーできません。
チェンバロのために作曲した伴奏が必要だと思いました。
ピアノとチェンバロでは、発音の仕組みが違います。
ピアノは弦を打つ打弦楽器、チェンバロは、爪を弦にかけてはじく撥弦楽器です。
チェンバロの鍵盤に指を乗せると、微かな抵抗が感じられます。
そっと重さをかけると、何かがプツンと外れるような感じがして鋭く音が立ち上がり、
次の瞬間空中にパァーッと投網のように、繊細な響きが広がります。
細い糸でレースを編むような気持で、私はこのチェンバロのための伴奏を作曲しました。
ピアノで弾くこともできますが、そのときは耳を傾けながら、そっとそっと弾いて下さい。
作曲や編曲に興味をお持ちの方は、ギター伴奏版やピアノ伴奏版と比べてご覧になっても
面白いでしょう。ギター伴奏版は、私のCD「ひらがなの手紙2」に収録されています。
チェンバロ伴奏版は、江崎浩司さんとチェンバロの長久真実子さんの演奏で
CD「ひらがなの手紙5」に収録。2011年秋に発売いたします。
出版に際しては、お二人に試奏をお願いして、楽器に関してアドヴァイスを頂きました。
リコーダーのアーティキュレーションは、江崎浩司さんにお願いしました。
堀江はるよ
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