職人芸がパソコンに生きる

楽譜浄書
「石原楽譜」ご紹介
 



作:かたつむり出版 




イシハラさんの写真館へ


~1~ 石原功さんのプロフィル(談)   


東京タワーの建築が始まった頃、愛宕山の近くに長元寺というお寺がありました。
その一角で楽譜浄書の仕事をしておられた中野福三氏に師事。
この頃、三善晃先生の作品の浄書にも関わらせて頂きました。

その後、中野氏が設立された(株)第一楽譜に移籍、
主に(株)音楽之友社の楽譜浄書で活躍。世界音楽全集、世界オペラ全集は
第一刷版から全巻にわたって関わらせて頂きました。

同社の仕事では、L・クロイツァー著/クロイツァー豊子・村上紀子・共訳の
「芸術としてのピアノ演奏」の楽譜および譜例の浄書を担当した折に、
巻末の「訳者あとがき」に、名前を挙げて感謝の言葉を書いて頂きました。
裏方、黒子のような存在の楽譜浄書の世界では前例のないことで、
想い出に残っております。

八年後、「石原楽譜」として独立。
主に世界文化社の「ワンダーランド」、講談社の「ヤングフォーク」、
集英社の「ガッツ」、リトゥルミュージックの「キーボードマガジン」、
現代ギター社の「月刊現代ギター」等で活躍。この頃、作品の浄書を通して、
堀江はるよ先生とも、お話させて頂くようになりました。

現在はコンピューターによる楽譜浄書で、新たな作品に関わりながら、
クレヨンハウスの月刊誌「クーヨン」のお仕事も、させて頂いております。


 
 
~2~ 石原功さんの「楽譜ばなし」   


 
紅葉の見頃も終わりを告げて落ち葉が歩道を染めている中を、自転車で買い物に出かけた。
JRの吉祥寺駅付近である。相変わらずの雑踏の中、西寄りのガードのあたりで、中国写真展の
掲示が目に入った。尋ねてみると中国は四川省の自治州九寨溝へ旅行したスナップ集だった。

神秘的な絶景の連続で、好奇心の旺盛な私は黙って見ては帰れず、主宰者に話しかけて見た。

 「撮影されたカメラはデジタルですか?」
 「いいえ、ポジフィルムで撮ってきました」

その返事を聴いて暫く絶句してしまった。
きちんと整理されて展示された作品の一つ一つに、改めて見入ってしまう。
やがて主宰者である桜井さんから質問され、自分の仕事を打ち明けた。

 「楽譜屋です」
 「え?楽譜を売ってるのですか?」
 「いえ、楽譜浄書と言いまして…」

いつもそうなのだが説明すると長くなってしまうのである。
印刷用の楽譜の版下制作ということなのだが、これでもさっぱり判って貰えない事が多い。
作曲・編曲者の作品原稿を譜面にするのだが、十年程前からコンピューター化されている。
では以前はというと、まるきりの手作りだった。

私も今はコンピューターで仕事をしている。デジタルカメラか、以前のようなフィルムカメラか、
どちらも善し悪しはあろうが、永いことやってきた手作りは、いまの私に大変役に立っている。
何十年もの職人仕事で培った手作業の楽譜浄書の技、膨大な楽譜を手作りしてきた経験は、
私にとって、かけがえの無い財産だと思う。

手作りの楽譜が、どんな工程で作られて来たのか、皆様の御存知ないことも多かろう。
たとえば、印鑑(はんこ)や烏口(からすぐち)が、楽譜とどんな関係があるのか…
少しずつお話をしたいと思っている。




「石原功さんの楽譜ばなし」は、連載予定で準備中です。
 珍しい話が沢山あります。どうぞご愛読下さい。

 エッセイ  石原功さんの楽譜
「ひらがなの手紙4」より

 
 
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